男の子「むかしむかし、ひとりの王子が旅をしていました」
男の子「旅の途中、ある国で道に迷った時のこと・・・・・・」
男の子「王子は森の中の教会で、美しい姫と出会いました」
男の子「"なんと美しい姫だろう"王子は一目で姫を好きになりました」
男の子「二人は毎日森の教会で会い、やがて深く愛し合うようになりました・・・・・・」
男の子「ところがそのことを聞いたこの国の王は、たいへん腹を立ててしまいました」
男の子「"我が姫をたぶらかす者は誰か?すぐに捕らえよ!"」
男の子「王は王子を捕らえると、こう言いました」
男の子「"旅の王子よ、そなたは姫を好いていると言うが、その言葉に偽りはないか?"」
男の子「"姫は私の心の幸い。姫の愛さえあればいかなる試練も喜びに変えることが出来ます"」
男の子「"ならばはるか遠く、この世の果ての外国へ旅立つが良い"」
男の子「"無事戻ることがかなえば、その時そなたの言葉を信じよう"」
男の子「こうして王は、王子を遠い国へ追放してしまうのでした・・・・・・」
男の子「遠い国へ旅立つ日、悲しみに打ちひしがれる姫に王子はこう告げました」
男の子「"私は旅立たなければなりません。でも、どうか悲しまないでください"」
男の子「"私の心はあなたのもの。たとえ世界の果てからでも、いつか必ず迎えに参ります"」
男の子「それから姫は毎日、森の教会で王子の無事を祈りました」
男の子「いつか、王子が迎えに来る日を信じて・・・・・・」

男の子「・・・・・・見て、あの窓。ステンドグラスっていうんだ」
男の子「この本のお話と同じだ・・・・・・」
男の子「この教会なんだ、きっと・・・・・・」
男の子「・・・・・・もう行かなきゃ・・・・・・」
男の子「王子は、必ず迎えにくるから・・・・・・」
男の子「・・・・・・約束」

浜崎「・・・・・・!?・・・・・夢?」
浜崎「・・・・・・懐かしいような、不思議な夢・・・・・・」
浜崎「・・・・・・あれ?わたし、泣いてたのかな・・・・・・?」
浜崎「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
浜崎「さて、と。今日は"はばたき学園"の入学式」
浜崎「小さいころ住んでいたこの町で、今日から私の高校生活がはじまる・・・・・・」
浜崎「早く新しい生活になれて、友達もたくさん作らなくちゃ」

浜崎(ここが今日からわたしが通う"はばたき学園・高等部"ね)
浜崎(入学式までまだ少し時間があるから、ぐるっと見てみようっと)

浜崎(・・・・・・ここが反対側の校舎裏かな)
浜崎「・・・・・・?なんだろう、あの建物・・・・・・」

浜崎(教会かな・・・・・・あれ?この場所、どこかで・・・・・・)
浜崎「閉まってるんだ・・・・・・」
浜崎「いけない、もうこんな時間!入学式の会場に行かなきゃ・・・・・・」
浜崎「わっ!!」
浜崎「いたた・・・・・・・・・・・・?」
葉月「ほら・・・・・・」
浜崎「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
葉月「どうした?・・・・・・手、貸せよ」
浜崎「・・・・・・は、はい」
葉月「大丈夫か?」
浜崎「ご、ごめんなさい!」
浜崎「あの、すみません、先輩。わたし、慌ててたから・・・・・・」
葉月「俺も、一年」
浜崎「あ、そうなんだ!よろしくね!わたし、浜崎薫」
浜崎「・・・・・・?」
葉月「・・・・・・急いでたんだろ?入学式」
浜崎「あっ、そうだった!!・・・・・・あれ?でも・・・・・・」
葉月「俺は・・・・・・ここで入学式」
浜崎「・・・・・・?」
葉月「早く行った方がいい」
浜崎「あ、うん。それじゃあ、えっと・・・・・・」
葉月「葉月珪」
浜崎「ありがとう!葉月くん」
浜崎(葉月くん、か。うん!わたしの高校生活、いいことがありそう!!)

理事長「さて、皆さん。皆さんは今日こうして、この学び舎に集いました」
理事長「勉学に励むのもいい、スポーツに打ち込むのも素晴らしい。恋に捧げる青春もあるでしょう」
理事長「我が校の校則はただ一つ、青春を謳歌すること」
理事長「さあ皆さん、このはばたき学園で大いに学び、笑い、悩んでください」
理事長「そして3年後。学園をはばたいていく日を笑顔で迎えようではありませんか!」

浜崎(・・・・・・あれ?あの子、何してるんだろ?)
紺野「フゥ・・・・・・」
浜崎「ね、どうしたの?」
紺野「え!?あの、その・・・・・・わたし・・・・・・」
浜崎「???」
紺野「わたし・・・・・・深呼吸してて・・・・・・あの、教室行くのに緊張しちゃって」
紺野「ごめんなさい・・・・・・こんなトコ立ってたら邪魔ですね」
浜崎「・・・・・・ねぇ、もしかして、一年生?」
紺野「・・・・・・はい。紺野珠美・・・・・・一年です」
浜崎「わたし、浜崎薫。同じ一年。この間はばたき市に引っ越してきたばかりなんだ、よろしくね」
紺野「あ、あの、こちらこそ。よろしくお願いします」
浜崎「そんなに緊張しなくていいよ。同じ一年なんだし、ね?」
紺野「う、うん・・・・・・ありがとう」
浜崎「どういたしまして」
紺野「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
浜崎「・・・・・・ね、ねえ!同じ一年生の葉月くんって知ってる?」
紺野「・・・・・・葉月君って、あの、モデルの葉月珪君?」
浜崎「モデル・・・・・・?」
紺野「うん、最近よく雑誌に出てるみたい」
浜崎「そうなんだ」
紺野「とっても頭がよくて、スポーツも出来て、中等部の頃から有名だったけど・・・・・・」
浜崎「ふーん・・・・・・。じゃあ、きっと人気者なんだろうねぇ」
紺野「そう、かな・・・・・・あんまり友達と一緒にいるとこ、見たことないけど・・・・・・」
紺野「あ、じゃあ、もうわたし・・・・・・」
浜崎「うん、じゃあ、またね!」
浜崎(紺野さんか・・・・・・。ちょっと内気そうな子だな・・・・・・)

浜崎(担任の先生ってどんな人だろ?)
浜崎(あっ、きた!!)
氷室「私が君達を担任する。氷室零一だ」
氷室「私のクラスの生徒には、常に節度を守り、勤勉であるよう心がけてもらいたい」
氷室「以上だ。質問のある者は?」
生徒「はーい、質問。先生、恋人はいますか?」
氷室「たった今、節度を守るよう言ったはずだ。他には?」
生徒達「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
浜崎(なんだか、怖そうな先生だな・・・・・・)
氷室「・・・・・・ん?君・・・・・・浜崎」
浜崎「ハ、ハイ!!」
氷室「スカーフが曲がっている。直したまえ」
浜崎「え?あ、はいっ・・・・・・」
氷室「・・・・・・よろしい」
浜崎(・・・・・・なんだかスゴイ先生に当たっちゃったなぁ・・・・・・)

尽「ねえちゃん、おかえり!」
浜崎「あっ、尽!!また、ひとの部屋に・・・・・・」
尽「いいじゃん。ふたりっきりの姉弟なんだからさ。かたっくるしいこと言いっこナシ!」
浜崎「勝手に入るなって言ってるでしょ」
尽「わかってるよ。ところでさ・・・・・・学校にカッコイイ男、いた?」
浜崎「・・・・・・あんたには関係ないでしょ」
尽「ちぇっ。ねえちゃんも高校生なんだからさー、少しは"異性"に興味持てよな」
浜崎「うるさいなー。あんたこそ、どうだったの、転校初日は?」
尽「オレは世渡りうまいもん。友達だって一日でたくさんできたし。彼女は・・・・・・まだ3人だけどさ」
浜崎「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
尽「ねえちゃんは、意外とドジなとこあるからなー。弟のオレとしちゃ心配だよ、うん」
尽「とにかくさ、何か知りたい情報があったら、いつでもオレを呼んでよ」
尽「情報料は、安くしとくよ。そうだなぁ、たまに小遣いくれればそれでオッケーだよ」
浜崎「・・・・・・それが目当てか」
尽「ははっ、バレたか〜。欲しいゲームソフトがあるんだ。じゃ、待ってるからね」
浜崎「まったく抜け目がないんだから・・・・・・」
浜崎(でも・・・・・・そっか。何か知りたいことが出来たら尽に聞くことにしよっと)